27年3月議会「一般質問」

(質問項目1) 集積した医療・福祉施設を人口定住総合戦略に活用すべき

 

(この質問をした理由)

 

地方創生に絡む地方版総合戦略に関し、人口定住に成功している海士町、あるいは徳島県の上勝町を見るに、成功の大きな原因は、当該地域の特性を十分に発揮し、地域づくりを進めていることであると考えます。

我が出雲市の地域特性を見ますと、その一つとして、やはり集積した医療・福祉施設が挙げられ、私自身それに以前から注目しておりました。出雲市には医大、県立中央病院、市立総合医療センターをはじめとする各種医療施設、福祉施設、看護系大学、医療技師の養成学校が集積しており、更にそれらを取り巻く形で医薬品あるいは診療材料等の工場などのいわゆる医療関連業種も集積されており、地元のたくさんの人々の雇用や就学の場となっております。

昨年の5月8日に日本創成会議の人口減少問題検討分科会の報告によりますと、2010年から2040年までの若年女性(20歳~39歳)の人口減少率は出雲市では▲34,7%で、50%未満の減少率で、「消滅可能性自治体」とはみなされませんでした。このことは、出雲市には若年女性が働く場が多いことを意味しております。

特に医療や福祉は裾野の広い総合産業であり、人口減少社会の中で、今後もこの状況を確保するとともに、市外からも人々を呼び込む努力を引き続き行うべきであると考え質問いたしました。

中央病院
写真:高度・特殊・救急医療を提供する県立中央病院

 

質問

 

一例として、市立総合医療センターにおける職員及び医療関連ビジネスに携わる人々のおおよその人数は幾らか。

 

長岡市長 答弁

 

総合医療センターに勤務している職員は、嘱託職員を含めまして265名です。医療事務、清掃、患者給食などの委託業者の職員が約55名、合わせて320名程度でございます。これ以外に直接の雇用ではございませんが、医薬品、診療材料関係、医療機器の補修業務などを通じて多くの雇用を生み出しています。

 

質問

 

医工連携に関し、昨年の施政方針質問の答弁で、市長はニーズ調査をし、新たな医療・福祉機器や地元食材を活用した機能性食品の開発に取り組むと答弁されたが、その後の状況を伺う。

 

長岡市長 答弁

 

市では、今後成長が見込まれる医療・介護分野において、新たな商品、サービスを提供したいと考える市内の企業等々と、商品・サービスの充実を望む医療・介護現場の連携を支援しています。現在、医療・介護現場か抱える課題やニーズ情報を把握し、市内製造業やIT企業等に紹介し、産学連携による製品開発を目指す取り組みを進めています

一例を挙げますと、島根大学産学連携センター地域医学研究部門との取り組みでは、知的財産の取り扱いに配慮しながら、商工団体、特定非営利活動法人、21世紀出雲産業支援センター及びしまね産業振興財団と連携して、ニーズ情報を掘り下げたうえで企業紹介を行っております。その結果、共同研究あるいは共同開発に着手した事例も幾つかあります

また、市内企業が自社製品について、市内の介護施設等の現場の意見を反映させ、製品改良につなげていく取り組みも進めているところです。こうした取り組みの中から多くの出雲発の新たな製品が医療・介護に携わる皆様に喜ばれるような状況になることを期待をして取り組んでいます。

 

質問

 

出雲商工会議所において、薬草の実用化の取り組みがなされているが、状況を伺う。

 

長岡市長 答弁

 

この薬草の活用に関する取り組みについては、出雲商工会議所が主体となって行われています。この取り組みでは、本市に残る古事記、あるいは出雲風土記の記述の中から、出雲は古代から医療の先進地であったとされる点に着眼し、出雲の新しいイメージを創出することとされております。

また、美肌日本一の県として注目されたことも要素に加え、薬草を用いた商品やサービスを提供することにより、地域経済における幅広い分野への波及効果を生み、産業や観光の振興を図ることを目指しておられます。

H26年度は、薬草を活用した商品開発、薬膳料理や美肌温泉の可能性、出雲国風土記に掲載された薬草の栽培等について調査研究がされております。

H27年度においては、商品開発に向け、参画事業者を募り、ロゴやキャッチコピーについて検討される予定でございます。

市としても、商工団体と連携してこのプロジェクトの成功に向けた取り組みを支援してまいりたいと思っております。

 

質問

 

医療ツーリズムに関して、尾道松江線の開通など、交通アクセスも改善されますので、安心と癒しの環境に恵まれたこの出雲市で医療や健診を受けることの効用をPRすべきと考えるが、これについて伺う。

 

長岡市長 答弁

 

本市は、島根大学医学部附属病院、県立中央病院という高度急性期病院をはじめ医療機関が集積しております。このことは貴重な地域資源であるとは捉えておりますし、また、市立の総合医療センターでは、健診、人間ドックを展開し、予防医療の充実に力を入れているところでございます。

現在、人間ドック、住民検診など多くの受検者を受け入れており、マンパワーの確保が課題となるものの、この医療・健診と観光等を結びつけた医療ツアー、人間ドックツアーなどによる交流人口の創造というのは重要なテーマの一つと考えています。

 

質問

 

出雲市内の医療インフラの一つとして脚光を浴びているのが医療情報ネットワーク、いわゆるまめネットでございますが、これの普及率(加入率)についてお伺いいたします。

 

長岡市長 答弁

 

まねネットは、NPO法人しまね医療情報ネットワーク協会を管理運営主体として、島根県主導のもと、島根県全域の医療機関等において、医療情報を共有するネットワークです

しまね医療情報ネットワーク協会によりますと、出雲市内にまねネットに加入している医療機関数は平成27年(2015)1月31日現在で、11病院中9病院、168ある診療所のうち96の診療所となっております。加入率は病院が81.8%、診療所が57.1%、合計で申しますと58.7%ということでございまして、ちなみに県内の各医療圏域の中ではこの出雲医療圏域の加入率が一番高いということでございます。

出雲市としては、出雲市総合医療センターが平成26年(2014)4月からまねネットに加入し、新年度には出雲の休日夜間診療所がまた新たに加入する予定でございます。まねネットに加入する医療機関を増やすことによって、複数の医療機関に分散していた医療情報を共有することができ、安全でりますしまね医療情報ネットワーク協会において、まねネットに加入する医療機関を増やすために、診療所等に対する電話加入などを積極的に行われていると伺っております。

また、本市としても、本市が主催する各種説明会の開催に併せて島根県及びしまね医療情報ネットワーク協会が医療機関向けの講習会を開催するなど、まねネットの普及拡大に協力している状況でございます。

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質問

 

集積のメリットを十分に発揮するには、大学とか県立病院関係者、医療関連業者などとの連携が欠かせないと考えるが、これについて伺う。

 

長岡市長 答弁

 

医療、介護、介護予防、住まい、生活支援の五つを構成要素とした地域包括ケアシステムの構築のためには、医師、看護師、リハビリ職種等の医療従事者、介護支援専門員等の介護関係職種など、多くの職種の連携による対応が必要となってまいります。平成25年度(2013)から出雲保健所の主催により地域包括ケアシステムの構築や医療と介護の連携のための取り組みとして、出雲市や出雲医師会、医療機関や介護施設の関係者を委員とした連絡会を設置し、意見交換を行ってまいりました。また、在宅医療の連携推進のために必要である医療機関や介護施設の職員を対象とした事例検討会や多職種連携のための研修会などを開催してきたところであります。

H27年度以降はいよいよ本市が主導的な役割を果たすことになっており、出雲医師会や出雲保健所などの関係機関との連携をさらに密にし、出雲市民の安心・安全につながる仕組みを構築してまいりたいと考えております。

 

質問

 

本市の集積した医療や福祉施設を生かした人口定住策を総合戦略の政策バッケージとして取りあげるべきと考えるが、これについて伺う。

なお、2月28日の山陰中央新報を見ますと、医療環境か充実している米子市において、先端医療創造都市構想をまとめ、一部を地方版総合戦略に反映させる旨が報道されています。米子市が着目しているのは先端医療でありますが、出雲市は出雲市内の方法があろうかと思います。

 

長岡市長 答弁

 

市内には医療・福祉関係の学校・病院・施設・企業等が多く集積しており、雇用や就学の場となっております。市では今後、本市の強みとして考えられる医療・福祉に関する施策について、この総合戦略の中の政策パッケージとして盛り込めるものかどうか、その辺をいま一度検討してまいりたいと考えます

(質問項目2)古代山陰道(杉沢遺跡道路遺構)と人口定住総合戦略について

(この質問をした理由)

 

2月15日に、アクティひかわで開催された古代山陰道(杉沢遺跡道路遺構)を考えるシンポジウムは、古代出雲の文化財の関心の高さを反映し、ホールいっぱいの200人で埋め尽くされていました。市外の方はもちろん、遠く県外からも参加されていました。今回発掘された古代山陰道は出雲風土記において正西道(まにしのみち)と称され、その特徴は尾根伝いにつながっていることです。このシンポジウムでは、発掘にあたった文化財課の職員、文化庁の専門官、大学教授の説明や討論がなされ、その文化財的価値とか今後の活用などについて様々な議論がなされました。

古代山陰道の発掘調査は平成31年まで続く予定ですが、全国の学生や研究学徒を招き、発掘調査活動に従事してもらうこと(交流人口の増加)や「日本遺産」への認定に働きかけることについて、執行部へ質問をしました。

遺産

 

質問

 

平成26年度(2014)から6年間かけて調査をするとのことであるが、調査の主眼は何か。

 

曽田俊彦文化環境部長 答弁

 

調査の主眼について

平成25年(2013)9月に出雲斐川中央工業団地造成予定地内の杉沢遺跡において、古代山陰道が発見され、同年10月に文化庁の文化財調査官が現地視察を実施。

古代道路遺構が丘陵の尾根上に1キロにわたる規模で残っているところは全国的に見てもほとんどないなど、その重要性を指摘されました。

古代道路は、出雲国風土記記載の古代官道、正西道(まにしのみち)であることがほぼ確実であり、その保存状態がよいことから、今後文化庁や島根県の指導を得ながら、その価値をより明確にしていくものです。

今後の調査についてまず本年度から平成28年度(2016)までを第1期として、丘陵西側650メートルを調査し、平成29年(2017)に国史跡の指定を目指す考えです。次に、平成30年(2018)・31年(2019)を第2期とし、丘陵東側(市道杉沢線の東)350メートルを調査し、翌平成32年(2020)に国史跡の追加指定を目指す考えであります。

 

下図:出雲国風土記記載の古代官道、正西道(まにしのみち)と古代山陰道の道路遺構と仏教山

史跡1史跡2
 

質問

 

今後の活用について、どのような考えか。

 

曽田俊彦文化環境部長 答弁

 

文化庁の調査官からは、「山の稜線に沿って延々と続く切り通しは、壮観である。まさに全国的にも貴重な遺跡である」と言及されました。

今後は、「古代出雲」を思い起こさせる出雲独自の新しい活用策を考えていくことが重要であると考えます。そのためには、専門家のみならず、地域住民の皆様にも参加していただき、一緒になって整備・活用方針を検討していきたいと考えております。

 

質問

 

出雲の歴史文化遺産を「日本遺産」に認定し、この地域を世界に発信する旨が施政方針に述べられているが、この古代山陰道もその一つとして位置付ける構想があるか。

 

曽田俊彦文化環境部長 答弁

 

古代山陰道の位置付けについては、新年度、日本遺産を目指して取り組む歴史文化基本構想の策定に向けて設置する出雲市歴史文化基本構想策定委員会で検討していただくことにしております。

 

質問

 

全国的にも注目されている連綿としてつながる古代出雲の文化財の発掘・調査・研究に、全国の学生とか研究学徒を招き、交流人口の拡大、さらには定住化につなげるよう人口定住総合戦略の一つとして取りあげるべきと考えるが、その意向を伺う。

 

曽田俊彦文化環境部長 答弁

 

本市は、文化財の宝庫で古代遺跡をはじめとする調査・研究の素材は豊富に存在しているところでございます。今後、文化財につきましても人口定住総合戦略の一つとして盛り込めるものがあるかどうか、検討していきたいと考えております。

 

再質問

 

いわゆる古代出雲という一つのムードができている。あるいは全国の人からも評価もいただいている。学生とか研究学徒を招き入れ、発掘計画のあるところで発掘作業に従事してもらう、それも古民家活用も兼ねてそういうことを思いつかれてはと考えるがいかがか。

 

曽田俊彦文化環境部長 答弁

 

先ほどの学生のインターンシップとか、そういうのを活用しながら、文化財担当のマンパワーを見ながらぜひ参考にさせていただきながら、現場で検討させていただきたいと思います。

(質問項目3) 高齢者クラブ(老人クラブ)について

(この質問をした理由)

 

H27年度から、単位高齢者クラブへの補助金(一単位あたり5万円)を廃止し、今までの補助金額を出雲市高齢者クラブ連合会への補助金に統合することとされています。

確かにこの補助金については、①事務作業が高齢者にとっては大変であること、②補助金の使い道に制約があり思うような事業計画が立てられないなど単位高齢者クラブでは評判の悪いものでした。

また、最近の地域の高齢者クラブでは、役員のなり手がない、あるいは加入者の減少や脱退など、好ましくない傾向が生じております。

しかし、単位高齢者クラブは、地域でのボランティア活動あるいは社会活動、あるいは子どもの見守りとか、経験をもとにした教育活動など、高齢者の知恵と経験を生かした様々な活動を行っておられますし、また、健康活動とか、高齢者同士の安否確認など、現在、地域で求められている共助活動など、重要な役割を果たしておられます

市は、補助の重点を出雲市高齢者クラブ連合会へ移行する方針を出していますが、地縁を中心とした単位高齢者クラブに今後どのような考えで臨もうとしているかを引き出したく、何点か質問をしました。

 

質問

 

出雲市における斐川町合併時点から今日までの単位高齢者クラブの数と会員数の推移について伺う。

 

佐藤茂健康福祉部長 答弁

 

  • 平成24年度(2012)が271クラブで1万7,717人
  • 平成25年度(2013)が271クラブで1万7,383人
  • 平成26年度(2014)が264クラブで1万6,528人

で、減少傾向にあります。

 

質問

 

単位高齢者クラブへの市補助金が来年度からなくなるが、その理由と内容について伺う。

 

佐藤茂健康福祉部長 答弁

 

高齢者クラブ補助金の見直しについて、平成26年度には、出雲市高齢者クラブ連合会が行う事業に対し490万円単位高齢者クラブが行う事業に対し1,320万円(5万円の264クラブ分)総額1,810万円を交付決定しています。

平成27年度につきましては、補助対象を高齢者クラブ連合会が行う事業に一本化し、平成26年度の補助総額と同額の1,810万円を交付する予算案とさせていただいております

この一本化によりまして、高齢者クラブの活動がさらに幅広く展開していくものと考えております。複数の単位クラブが合同で行う健康づくり活動、あるいは単位クラブ同士の情報交換、交流の企画など、これまで以上に魅力ある内容でクラブの活動を活性化していただきたいと考えています。

また、補助金の一本化で各単位クラブの会計処理に伴う事務負担は大幅に軽減されるものと考えます。

 

質問

 

今後の高齢者クラブへ期待することについて伺う。

 

佐藤茂健康福祉部長 答弁

 

出雲市高齢者クラブ連合会は、平成22年度に「高齢者の誓い」を制定されまして、高齢者が地域社会の担い手として健康で生きがいのある生活ができる「安心の出雲市」を目指して努力されております。今後も組織の充実を図り、地域に応じた様々な活動を積極的に展開されることを期待しています。

 

再質問

 

事務負担の軽減に取り組まれてきたということは大いに評価できます。なお、安否確認とかの地縁的な共助機能が弱まるのではないかと懸念するが、この点について伺う。

 

佐藤茂健康福祉部長 答弁

 

今回の見直しは、連合会とも話をさせていただきながら進めてきました。

連合会とは今後も市と相談をさせてもらいながら、スムーズに事業行われるようお願いをしていきたいと思います。

地域の見守り活動は貴重な活動でございますので、継続していただきたいと思っております。今回の見直しによって、新たな企画を単位クラブあるいは地域ごとの連合会(斐川町老人クラブ連合会など)でご検討いただき、より活発な活動をしていただくよう期待をしております

 

コメント

 

市は補助の重点を出雲市高齢者クラブ連合会へ移行する方針を出しましたが、地縁を中心とした単位高齢者クラブの役割の重要性を十分に認識していることは確認されました。特に質問では取り上げませんでしたが、現場において要望の強かった補助金の使い方、すなわち「飲食は別として、活動に必要な経費は自由に使わせて欲しい。今のままのやり方では会員は先細りになる。」旨について改善の方法はないのか、出雲市高齢者クラブ連合会との協議も含め、模索・検討してみたいと考えます。

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